狙い
後手番の戦法です。米長流急戦矢倉は、矢倉で後手が待たずに主導権を取る指し方の一つです。ja.wikipedia によると、米長邦雄が得意にし、中原誠から十段を奪ったのをきっかけに、1980年代半ばにプロの間で大流行しました。
玉を4一、金を3二と5二、銀を4二と6二に置くカニ囲いに組み、角は2二に置いたまま大きな斜めをにらませ、△6四歩と突き、△7三桂と跳ねます。攻めは6筋で、8筋の歩と桂も加わり、突破して馬を作るのがねらいです。先手の対策は時間をかけて見つかりました。
早めの▲7九角が有効とわかり、プロは指さなくなった、と ja.wikipedia は書いています。この手順はその受けを示すものです。後手は全力で攻め、先手は▲6六歩と打って受け止めます。初手からの手順の唯一の資料はこれを好手とし、同じ局面が2004年の竜王戦七番勝負第1局に現れ、先手が勝ったとしています。
組み方
双方の指し手を並べてあります。この戦法は片方だけで組める形ではなく、相手がそう応じて初めて成立する戦型なので、先手の手だけを並べても手順としては嘘になります。
一手ずつ進めるか、再生を押してください。
指し手をタップするとその局面に飛びます。盤を選ぶと矢印キーも使えます。
全手順と、その理由
| # | 先手 | 後手 | 狙い |
|---|---|---|---|
| 1 | ▲7六歩 7g7f | △8四歩 8c8d | 先手が角道を開けます。 飛車先の歩を突きます。 |
| 3 | ▲6八銀 7i6h | △3四歩 3c3d | 先手は左の銀を6八へ。 角道を開けます。この角道は開けたままにします。 |
| 5 | ▲6六歩 6g6f | △6二銀 7a6b | 先手は▲6六歩で角道を止めます。矢倉です。 右の銀を6二へ。 |
| 7 | ▲5六歩 5g5f | △5四歩 5c5d | 先手は5筋の歩を突きます。 5筋の歩を突きます。 |
| 9 | ▲4八銀 3i4h | △4二銀 3a4b | 左の銀を4二へ。 |
| 11 | ▲7八金 6i7h | △3二金 4a3b | 金を3二へ。 |
| 13 | ▲6九玉 5i6i | △4一玉 5a4a | 先手の玉は6九へ。 玉を4一へ。 |
| 15 | ▲5八金 4i5h | △7四歩 7c7d | 7筋の歩を突きます。 |
| 17 | ▲6七金右 5h6g | △8五歩 8d8e | 飛車先の歩を8五まで伸ばします。 |
| 19 | ▲7七銀 6h7g | △6四歩 6c6d | 先手の銀は7七へ。 △6四歩。攻めるのは6筋です。 |
| 21 | ▲2六歩 2g2f | △5二金 6a5b | 右の金を5二へ。カニ囲いの完成です。玉4一、金3二・5二、銀4二・6二。 |
| 23 | ▲2五歩 2f2e | △7三桂 8a7c | 先手は飛車先の歩を2五まで伸ばします。 角道を開けたまま△7三桂。歩と桂で6筋をねらいます。 |
| 25 | ▲7九角 8h7i | △5三銀左 4b5c | 先手は角を7九に引きます。ja.wikipedia の基本形です。 左の銀を5三へ。 |
| 27 | ▲3六歩 3g3f | △6五歩 6d6e | 先手は▲3六歩。 △6五歩と仕掛けます。 |
| 29 | ▲同歩 6f6e | △8六歩 8e8f | 先手が取ります。 8筋の歩も加えて△8六歩。 |
| 31 | ▲同歩 8g8f | △6五桂 7c6e | 先手が取ります。 桂で6五を取ります。 |
| 33 | ▲6六銀 7g6f | △8六飛 8b8f | 先手は銀を6六に上げ、桂に当てます。 飛車で8六を取ります。 |
| 35 | ▲8七歩 P*8g | △8一飛 8f8a | 先手は8七に歩を打ち、飛車に当てます。 飛車は8一に引きます。 |
| 37 | ▲2四歩 2e2d | △同歩 2c2d | 先手は飛車先の歩を交換し、 取ります。 |
| 39 | ▲同角 7i2d | △2六歩 P*2f | 7九の角が2四で取り返します。 △2六歩と、飛車の筋の、先手の角の後ろに歩を打ちます。 |
| 41 | ▲5九銀 4h5i | △7五歩 7d7e | 先手の銀は5九に引きます。 △7五歩。 |
| 43 | ▲4六角 2d4f | △6六角 2b6f | 先手の角は4六に出て、後手の攻めをにらみます。 角で6六の銀を取ります。 |
| 45 | ▲同金 6g6f | △5七銀 S*5g | 先手の金が取ります。 △5七銀と打ちます。 |
| 47 | ▲6五金 6f6e | △4六銀成 5g4f+ | 先手の金はさらに6五へ。 銀が4六の角を取って成ります。 |
| 49 | ▲同歩 4g4f | △4七角 B*4g | 先手が取ります。 △4七角と打ちます。 |
| 51 | ▲5八銀 5i5h | △5六角成 4g5f+ | 先手の銀は5八へ。 角が5六で取って成ります。 |
| 53 | ▲6六歩 P*6f | 先手は▲6六歩と打ちます。資料は、先手が勝った2004年のタイトル戦の一局に現れた好手としています。 |
駒組みのあとの指し方
- カニ囲いに組みます。玉4一、金3二・5二、銀4二・6二。7筋の歩を突き、飛車先の歩を8五まで伸ばします。
- 角を2二に置いたまま、△6四歩と突いて△7三桂と跳ねます。
- 左の銀を5三に上げてから△6五歩と仕掛けます。
- 先手が取ったら、△8六歩と△6五桂を加え、8六を飛車で取ります。
- 先手の2筋の歩の交換には△2六歩と打ち、6六の銀を角で取って△5七銀と打ちます。
気をつけること
- 先手の7九の角。2筋の歩を交換して4六に出て、後手の攻めをにらみます。
- すぐに攻める形。資料のもう一つの手順は二十六手目にすぐ△6五歩と突くもので、後手が勝つのは、先手がのちに7五の歩を取ってしまうからです。先手の正しい応手は▲3六歩だ、と資料は示しています。
- 自玉。急戦矢倉は後手玉が薄く、先手が攻めをしのぐと反撃は速くなります。
- もう一つの形。ja.wikipedia の矢倉囲いの記事には、銀を4四に出し、△5五歩と△6五歩で攻める1986年の米長流の形が載っています。のちの藤森哲也の形は飛車を8三に置きます。
どんな相手に指すか
矢倉に組む先手は、玉を矢倉に入れず6九に置き、早めに角を7九に引いて2筋の歩を交換し、6筋の仕掛けは取って応じます。この手順の全力の攻めに対して、先手は駒を返しながら▲6六歩を見つけます。
2010年代後半には、後手の居角左美濃急戦に対して先手がこの攻めを使うこともありました。
コンピュータ相手に指してみる。
アプリのコンピュータは、レベル9から12が四間飛車と矢倉の二つを定跡どおりに指し、Mino のレベルは人が指す序盤を指します。対局後の検討では、どの手で定跡を外れたかがわかります。まず手順を、次に狙いを試してください。