手合割 · 駒落ち
力の差がある二人が、対等に指すために。
将棋には昔から、強い人と弱い人が同じ盤に向かうための方法があります。強いほうが対局前に自分の駒を落とすのです。四百年のあいだ、将棋はこうして教えられてきました。互角の将棋で五十番続けて負けるより、よほど身につきます。
仕組み
強いほうを上手(うわて)といい、自分の駒を落として先に指します。弱いほうが下手(したて)で、駒はそろったまま後から指します。ほかはふつうの将棋と変わりません。落とした駒はそのまま盤外で、どちらの持ち駒にもなりません。落とす順番は決まっていて、香落ちから十枚落ちまで、一段階がだいたい一段級の差にあたります。
| 手合 | 読み方 | 上手が落とす駒 | 棋力差の目安 |
|---|---|---|---|
| 香落ち | きょうおち | 左の香車 | 一段級 |
| 角落ち | かくおち | 角行 | 二段級 |
| 飛車落ち | ひしゃおち | 飛車 | 三段級 |
| 飛香落ち | ひきょうおち | 飛車と左の香車 | 四段級 |
| 二枚落ち | にまいおち | 飛車と角行 | 五段級 |
| 四枚落ち | よんまいおち | 飛車・角行と両方の香車 | 六〜七段級 |
| 六枚落ち | ろくまいおち | 飛車・角行・両方の香車と両方の桂馬 | 八〜九段級 |
| 八枚落ち | はちまいおち | 玉将と金将と歩兵以外のすべて | 十段級以上 |
| 十枚落ち | じゅうまいおち | 玉将と歩兵以外のすべて | まったくの初心者 |
棋力差の目安は昔からのもので、教える人によって違います。強いアマチュアが初心者に六枚落ちで指すのはふつうのことですし、プロがアマチュアの強豪に二枚落ちで指す指導対局も、かつてはよくありました。大事なのは差が正確かどうかではなく、双方が考えなければ勝てないことです。
三つの初形
駒落ちが教えてくれること
- 下手が攻める。駒が多いのですから、まず囲いをつくり、上手が守りきれない筋を攻めるのが自然な指し方になります。攻めは初心者にいちばん必要な力で、しかも互角の将棋ではなかなか練習できません。
- 上手は受けて、反撃する。金二枚と歩九枚で局面を支えるのは、辛抱の勉強であり、少ない駒をどこまで働かせられるかの勉強でもあります。
- 負けた理由がはっきりする。互角の将棋では、初心者は負けても理由がわかりません。六枚落ちなら下手はずっと勝っているので、勝てなくなった瞬間が悪手を指した瞬間です。それなら教えられます。
下手の指し方
- 十枚落ち・八枚落ち:飛車と角を前に出し、敵陣で成って、龍と馬で玉を追います。裸の玉の詰まし方を覚えます。
- 六枚落ち・四枚落ち:端攻めです。上手の隅には香車も桂馬もいませんから、端歩を突き、その後ろに飛車を回し、歩を交換して、その筋に歩を打ち続ければ破れます。まず囲うこと。半分の駒しかなくても、上手は居玉をとがめてきます。
- 二枚落ち:定跡の宝庫です。三筋と四筋の歩を突き、右銀をその後ろに上がって、飛車を四筋へ。あるいは金銀の壁をつくり、ゆっくり押し上げていく。どちらも入門書には必ず載っています。
- 飛車落ち・角落ち:ほぼ互角です。相手にない駒を使い、その駒を交換しないこと。
アプリはまだ駒落ちに対応していません。いまはコンピュータの低いレベルが同じ役目をしていて、平手で、弱いなりに真面目な将棋を指します。駒落ちを入れるときは、この手合割でいきます。
弱くても、いい加減には指さない相手と。
アプリのコンピュータは十二段階。いちばん下は初心者のように指します。でたらめではありません。覚えるあいだは待ったもヒントも使えます。