狙い
後手番の戦法です。阿久津流急戦矢倉は、ゆっくりした相矢倉を避ける後手の指し方の一つです。角道を開けたまま5筋の歩をぶつけます。先手が取り、角で取り返すと角は5五に立ち、そこから7三に引くか、中原流のように2二に引きます。
銀を中央に出し、△6五歩で仕掛けるのがねらいで、ja.wikipedia によると先手の応手しだいでは攻めをやめて持久戦にすることも多い戦法です。名前は阿久津主税から来ています。ja.wikipedia は中原流、郷田流、渡辺流とも呼ばれるとしていますが、ここでは将棋ウォーズにならい、中原流を別の戦法として扱います。
有名になったのは2008年の竜王戦七番勝負で、カド番に追い込まれた渡辺明が第6局と第7局でこの戦法を採用し、どちらの局でも新手を出して二連勝しました。最初の二十二手の資料は一つです。
二十五手目からは第6局の渡辺の新手、静かな△3一玉までをたどり、そのあとは、先手が▲6五歩と仕掛けた場合の例として ja.wikipedia が示す手順です。実戦ではこの仕掛けは指されませんでした。
組み方
双方の指し手を並べてあります。この戦法は片方だけで組める形ではなく、相手がそう応じて初めて成立する戦型なので、先手の手だけを並べても手順としては嘘になります。
一手ずつ進めるか、再生を押してください。
指し手をタップするとその局面に飛びます。盤を選ぶと矢印キーも使えます。
全手順と、その理由
| # | 先手 | 後手 | 狙い |
|---|---|---|---|
| 1 | ▲7六歩 7g7f | △8四歩 8c8d | 先手が角道を開けます。 飛車先の歩を突きます。 |
| 3 | ▲6八銀 7i6h | △3四歩 3c3d | 先手は左の銀を6八へ。 角道を開けます。この角道は開けたままです。 |
| 5 | ▲6六歩 6g6f | △6二銀 7a6b | 先手は角道を止めます。矢倉です。 右の銀を6二へ。 |
| 7 | ▲5六歩 5g5f | △5四歩 5c5d | 先手は5筋の歩を突きます。 5筋の歩を突きます。 |
| 9 | ▲4八銀 3i4h | △4二銀 3a4b | 左の銀を4二へ。 |
| 11 | ▲5八金右 4i5h | △3二金 4a3b | 金を3二へ。 |
| 13 | ▲7八金 6i7h | △4一玉 5a4a | 玉を4一へ。 |
| 15 | ▲6九玉 5i6i | △7四歩 7c7d | 7筋の歩を突きます。 |
| 17 | ▲6七金右 5h6g | △5三銀右 6b5c | 右の銀を5筋の歩の後ろの5三へ。 |
| 19 | ▲2六歩 2g2f | △8五歩 8d8e | 飛車先の歩を8五へ。 |
| 21 | ▲7七銀 6h7g | △5五歩 5d5e | 先手の銀は7七へ。 5筋の歩をぶつけます。 |
| 23 | ▲同歩 5f5e | △同角 2b5e | 先手が取ります。 角で取り返します。この戦法の基本形です。 |
| 25 | ▲7九角 8h7i | △7三角 5e7c | 先手は角を7九に引きます。 角を7三に引きます。 |
| 27 | ▲4六角 7i4f | △6四銀 5c6d | 先手の角は4六に出て、後手の角にぶつけます。 銀を6四へ。 |
| 29 | ▲7五歩 7f7e | △8四飛 8b8d | 先手は▲7五歩と突き、7四の歩に当てます。 飛車を8四に浮きます。 |
| 31 | ▲7四歩 7e7d | △同飛 8d7d | 先手が7四で取ります。 飛車で横から取り返します。 |
| 33 | ▲5六歩 P*5f | △3一玉 4a3a | 先手は5六に歩を打ちます。ここでは△5五歩が定跡とされていました。 渡辺の新手、△3一玉。歩は持ち駒のまま残します。 |
| 35 | ▲6五歩 6f6e | △同銀 6d6e | ここからは ja.wikipedia の例です。先手が▲6五歩と仕掛けます。 銀で取ります。 |
| 37 | ▲7三角成 4f7c+ | △同桂 8a7c | 先手の角が7三の角を取って成ります。 桂で取り返します。 |
| 39 | ▲6六歩 P*6f | △5一金 6a5a | 先手は6六に歩を打ち、銀に当てます。 二つ目の静かな手、△5一金。 |
| 41 | ▲6五歩 6f6e | △同桂 7c6e | 先手の歩が6五の銀を取ります。 桂で6五を取り返します。 |
| 43 | ▲7六銀 7g7f | △5七歩 P*5g | 先手の銀は7六へ。 △5七歩と打ち、先手玉の横の5八に成るのをねらいます。 |
駒組みのあとの指し方
- 薄く囲います。玉4一、金3二、銀4二。7筋の歩と飛車先の歩を8五まで突き、右の銀を5三へ。
- 先手が矢倉の銀を7七に上げたら、△5五歩とぶつけて角で取り返します。
- 角を7三に引き、銀を6四に出ます。
- ▲7五歩には飛車を8四に浮き、7四を横から取ります。
- △3一玉や△5一金のような小さな手で玉を整え、▲6五歩は取って応じます。
気をつけること
- 従来の手。第6局の局面では△5五歩が定跡でした。渡辺の△3一玉は歩を持ち駒に残しました。
- ▲7九角ではなく▲2五歩と突かれる形。先手の飛車が2筋で歩を交換してきます。第7局で渡辺はこれに対し△3三銀という新手を出しました。
- 先手のほかの対策。ja.wikipedia は、▲2六歩の代わりに▲5七銀右と6筋を厚くする形と、▲7七銀の代わりに▲2五歩と飛車先の歩を交換する形を挙げています。
- 自玉。薄いままです。攻めが止まったら持久戦に切り替えます。
どんな相手に指すか
矢倉をめざす先手は5筋の歩を取り、角を7九に引いてから7三の角にぶつけるように4六に出し、飛車側の7筋の歩を突き、5六に歩を打ち直します。歩を交換する前に、▲5七銀右や▲2五歩で本筋を避けることもできます。
コンピュータ相手に指してみる。
アプリのコンピュータは、レベル9から12が四間飛車と矢倉の二つを定跡どおりに指し、Mino のレベルは人が指す序盤を指します。対局後の検討では、どの手で定跡を外れたかがわかります。まず手順を、次に狙いを試してください。