狙い
後手番の戦法です。中原流急戦矢倉は、中原誠が好んだ対矢倉の指し方です。5筋の歩を角で交換し、その角を2二に戻すところが阿久津流との違いです。銀は二枚とも5四と4四に進み、玉を守るはずの金まで6三に上がります。ja.wikipedia は、一気に攻め潰すよりも、金銀で先手を圧迫する厚みのある急戦だと説明しています。
代償は金一枚しかいない後手玉の薄さで、中原自身、玉は薄いが飛角金銀桂を総動員できる、と語っています。初手から定跡として手順を示す資料は見つからなかったため、この手順は実戦の一局です。2016年の第87期棋聖戦五番勝負第4局、永瀬拓矢対羽生善治の最初の五十四手で、カド番の棋聖、羽生がこの戦法を選んで勝ちました。
二つの資料がこの将棋を中原流と呼び、一つは阿久津流で始まって中原流に合流したとしています。
組み方
双方の指し手を並べてあります。この戦法は片方だけで組める形ではなく、相手がそう応じて初めて成立する戦型なので、先手の手だけを並べても手順としては嘘になります。
初形
一手ずつ進めるか、再生を押してください。
指し手をタップするとその局面に飛びます。盤を選ぶと矢印キーも使えます。
全手順と、その理由
| # | 先手 | 後手 | 狙い |
|---|---|---|---|
| 1 | ▲7六歩 7g7f | △8四歩 8c8d | 先手が角道を開けます。 飛車先の歩を突きます。 |
| 3 | ▲6八銀 7i6h | △3四歩 3c3d | 先手は左の銀を6八へ。 角道を開けます。この角道は開けたままです。 |
| 5 | ▲7七銀 6h7g | △6二銀 7a6b | 先手は五手目に銀を7七へ。 右の銀を6二へ。 |
| 7 | ▲5六歩 5g5f | △5四歩 5c5d | 先手は5筋の歩を突きます。 5筋の歩を突きます。 |
| 9 | ▲4八銀 3i4h | △4二銀 3a4b | 左の銀を4二へ。 |
| 11 | ▲5八金右 4i5h | △3二金 4a3b | 金を3二へ。 |
| 13 | ▲6六歩 6g6f | △4一玉 5a4a | 先手は▲6六歩で角道を止めます。 玉を4一へ。 |
| 15 | ▲6七金 5h6g | △5三銀右 6b5c | 右の銀を5筋の歩の後ろの5三へ。 |
| 17 | ▲2六歩 2g2f | △5五歩 5d5e | 先手は飛車先の歩を突きます。 △5五歩と5筋の歩をぶつけます。 |
| 19 | ▲同歩 5f5e | △同角 2b5e | 先手が取ります。 角で5五を取り返します。 |
| 21 | ▲2五歩 2f2e | △5四銀 5c5d | 先手は飛車先の歩を2五まで伸ばします。 歩がいなくなった5四に銀を出ます。 |
| 23 | ▲2四歩 2e2d | △同歩 2c2d | 先手は飛車先の歩を交換し、 取ります。 |
| 25 | ▲同飛 2h2d | △2三歩 P*2c | 先手の飛車が取り返します。 △2三歩と打ち、飛車に当てます。 |
| 27 | ▲2八飛 2d2h | △7四歩 7c7d | 先手の飛車は2八に引きます。 7筋の歩を突きます。 |
| 29 | ▲5七銀 4h5g | △2二角 5e2b | 先手は右の銀を5七へ。 角を2二に戻します。中原流の目印です。阿久津流は7三に引きます。 |
| 31 | ▲7八金 6i7h | △5三銀 4b5c | 先手は金を7八へ。 左の銀を5三へ。 |
| 33 | ▲6九玉 5i6i | △6四歩 6c6d | 先手の玉は6九へ。 △6四歩。 |
| 35 | ▲4六銀 5g4f | △4四銀 5c4d | 先手の銀は4六へ。 二枚目の銀も4四に出ます。 |
| 37 | ▲7九玉 6i7i | △5二金 6a5b | 先手の玉は7九へ。 もう一枚の金を5二へ。 |
| 39 | ▲6八銀 7g6h | △6三金 5b6c | 先手は7七の銀を6八に引きます。 金を6三に上げます。銀が5四と4四、金が6三の中原流の形です。ja.wikipedia の矢倉囲いの記事は、この局面の後手側を図にしています。 |
| 41 | ▲5六歩 P*5f | △8五歩 8d8e | 先手は5六に歩を打ちます。 飛車先の歩を8五へ。 |
| 43 | ▲7七角 8h7g | △7三桂 8a7c | 先手の角は7七へ。 桂を7三へ。 |
| 45 | ▲3六歩 3g3f | △1四歩 1c1d | 先手は▲3六歩。 端歩を突きます。 |
| 47 | ▲1六歩 1g1f | △9四歩 9c9d | 先手も端歩で応じます。 反対の端歩も突きます。 |
| 49 | ▲9六歩 9g9f | △6五歩 6d6e | 先手もまた応じます。 △6五歩と6筋で仕掛けます。 |
| 51 | ▲5七銀上 6h5g | △5五歩 P*5e | 先手は6八の銀を5七に上げます。 △5五歩と打ちます。 |
| 53 | ▲3七桂 2i3g | △3五歩 3d3e | 先手は桂を3七に跳ねます。 そして△3五歩。資料の一つはこの局面を難解としています。この将棋は八十六手で後手が勝ちました。 |
駒組みのあとの指し方
- 角道を開けたまま△5五歩と突き、角で取り返して、右の銀を5四に出ます。
- 先手が2筋の歩を交換したら△2三歩と打ち、角を2二に戻します。
- △6四歩と突き、もう一枚の銀を4四へ、金を6三に上げます。
- 飛車先の歩を8五に伸ばし、桂を7三に跳ねてから、△6五歩と仕掛けます。
- △5五歩、△3五歩と中央で押し続け、銀の厚みで圧迫します。
気をつけること
- 自玉。玉の横には3二の金しかいません。先手の反撃が始まると、支える駒はほとんどありません。
- 先手の五手目。五手目が▲6六歩なら、先に△8五歩と突いて先手に▲7七銀を指させる必要があり、この戦法は指しにくくなる、というプロの見方を資料の一つが紹介しています。
- 先手の桂。▲3七桂のあと、4五に跳ねて後手の銀に当てることができ、この将棋でも数手後にそうなりました。資料の一つは中盤を難解としています。
どんな相手に指すか
先手は矢倉の金銀を組み、後手の角がいないうちに2筋の歩を交換して、右の銀を後手の銀と向かい合う4六に出します。この将棋で先手は左の銀を6八に引き、5六に歩を打ち、6筋の仕掛けには銀を5七に上げて桂を3七に跳ねて応じました。
コンピュータ相手に指してみる。
アプリのコンピュータは、レベル9から12が四間飛車と矢倉の二つを定跡どおりに指し、Mino のレベルは人が指す序盤を指します。対局後の検討では、どの手で定跡を外れたかがわかります。まず手順を、次に狙いを試してください。