狙い
嬉野流は、歩ではなく銀を動かして始まります。後手が△3四歩と角道を開けたあとに▲7六歩と突くと、銀がもう守っていない8八の角を取られてしまうので、角を7九へ引き、▲5六歩を突けばその角が2四の方向を見るようになります。続いて、たいていの戦法では守りに残す左の銀が、6八、5七、4六、3五と上がっていきます。
これが斜め棒銀で、飛車と角と銀がそろって後手陣の同じ隅を狙います。先手はほとんど囲いません。玉は一度だけ6九へ寄るか、5九にいたままで、相手の玉が固まる前に攻めが届かなければなりません。飛車先の歩を交換してくる居飛車に対しては、歩を8七ではなく8八に打ちます。
土下座の歩と呼ばれる手で、歩が8七にあると、後手の棒銀が8六歩、同歩、同銀と攻め込んできますが、8八に歩があれば、7八の金と歩の二枚が8七を守ります。アマチュアの嬉野宏明が考案し、天野貴元の2015年の本で広く知られるようになり、2017年に初めてプロ公式戦で指されました。
嬉野は2023年に、アマチュアとして二人目の升田幸三賞を受けています。
組み方
双方の指し手を並べてあります。この戦法は片方だけで組める形ではなく、相手がそう応じて初めて成立する戦型なので、先手の手だけを並べても手順としては嘘になります。
一手ずつ進めるか、再生を押してください。
指し手をタップするとその局面に飛びます。盤を選ぶと矢印キーも使えます。
全手順と、その理由
| # | 先手 | 後手 | 狙い |
|---|---|---|---|
| 1 | ▲6八銀 7i6h | △3四歩 3c3d | 銀から動きます。ほとんどすべての対局は歩から始まります。 後手が角道を開けます。ここで▲7六歩と突くと、8八の角を取られます。 |
| 3 | ▲7九角 8h7i | △8四歩 8c8d | 角は銀のいた7九へ引きます。 後手は飛車先の歩を突きます。居飛車です。 |
| 5 | ▲4八銀 3i4h | △8五歩 8d8e | 右の銀が4八へ。 |
| 7 | ▲7八金 6i7h | △8六歩 8e8f | 金が7八へ上がるのは、後手が飛車先の歩を突いてきたからです。 後手が飛車先の歩を交換します。 |
| 9 | ▲同歩 8g8f | △同飛 8b8f | |
| 11 | ▲8八歩 P*8h | △8二飛 8f8b | 8八への歩打ち、土下座の歩です。金と合わせて8七を二重に守ります。 後手の飛車が元に戻ります。 |
| 13 | ▲2六歩 2g2f | △4二銀 3a4b | 先手の飛車先の歩が伸びます。 |
| 15 | ▲2五歩 2f2e | △3三銀 4b3c | |
| 17 | ▲6九玉 5i6i | △3二金 4a3b | 玉が一つ動きます。囲いはこれだけです。 |
| 19 | ▲5六歩 5g5f | △3一角 2b3a | 5筋の歩が角道を開けます。 |
| 21 | ▲3六歩 3g3f | △5四歩 5c5d | |
| 23 | ▲5七銀左 6h5g | △6二銀 7a6b | 左の銀が5七へ。 |
| 25 | ▲4六銀 5g4f | △4一玉 5a4a | 銀が4六に着き、▲3五歩の仕掛けに備えます。 |
| 27 | ▲3五歩 3f3e | △同歩 3d3e | 仕掛けです。 |
| 29 | ▲同銀 4f3e | △3四歩 P*3d | 後手は3四に歩を打って銀に当てます。 |
| 31 | ▲2四歩 2e2d | △同歩 2c2d | 先手は銀への当たりにかまわず、2筋の歩を突きます。 |
| 33 | ▲同銀 3e2d | △同銀 3c2d | |
| 35 | ▲同飛 2h2d | △2三歩 P*2c | 銀が交換になり、先手は銀を一枚持ちます。 |
| 37 | ▲3四飛 2d3d | 飛車が3四の横歩を取ります。出典によれば、飛車を引く手もあります。 |
駒組みのあとの指し方
- ▲6八銀、そして△3四歩には▲7九角。▲7六歩は突かないこと。7九から銀がいなくなっているので、△8八角成で角を取られます。
- 後手が飛車先の歩を突いてきたら、金を7八へ、右の銀を4八へ。8筋の歩を交換されたら、歩を8八に打ちます。
- 飛車先の歩を2五まで伸ばし、▲5六歩で角道を開けます。左の銀は5七から4六へ、玉は一度だけ6九へ。
- ▲3五歩で仕掛けます。△同歩▲同銀△3四歩には銀をそのままにして▲2四歩。2四で自分の銀と相手の銀を交換するのが狙いです。
- 銀が交換になったら、飛車で3四の横歩を取れます。そこからは、持ち駒の銀をどれだけうまく使えるかが勝負を決めます。
気をつけること
- △4四角。知られている中で最も有力な対策で、4四の角で飛車交換を迫ります。将棋ウォーズに常駐するソフトが指し始めたもので、元の手順では受けにくい形です。新嬉野流の手順、▲6八銀△3四歩▲5六歩△8四歩▲5七銀は、先に銀を5七へ出してこれに備えます。
- 自分の8筋への棒銀。相手の銀に段を合わせて受けます。相手の銀が四段目に来たらこちらは6六へ、五段目に来たら6五へ、のちに7六へ引いて8七を守ります。歩の交換より前に来る銀には別の受けが必要で、それは▲6六歩から始まります。
- 自分の玉。5九の玉は4八を通る斜めの筋にいて、その銀が動いたとたんに筋が開きます。手順で玉を6九へ寄せるのはそのためです。
どんな相手に指すか
居飛車の相手はたいてい飛車先の歩を伸ばし、手薄な8筋へ棒銀を向けてきます。この戦法の本は二冊とも、その攻めに独立した節を設けています。最も評価の高い対策は、飛車交換を迫る△4四角です。
振り飛車に対しては玉を5九に置いたまま同じ斜め棒銀で攻め、四間飛車が相手なら昔からある鳥刺しの攻めになります。天野の本の書評によれば、三間飛車が難しい相手で、そこでは先に玉を囲う必要があります。
嬉野本人は、振り飛車に対して自分も中央か8筋へ飛車を振って応じることが多いそうです。
コンピュータ相手に指してみる。
アプリのコンピュータは、レベル9から12が四間飛車と矢倉の二つを定跡どおりに指し、Mino のレベルは人が指す序盤を指します。対局後の検討では、どの手で定跡を外れたかがわかります。まず手順を、次に狙いを試してください。