狙い
早石田では、先手はふつう先に玉を4八へ上がります。鈴木大介は七手目にいきなり▲7四歩と仕掛けました。この手は長く無理とされ、江戸時代の定跡書でも悪手とされていました。歩を交換して角を交換したあと、後手が△6五角と打てば、7四の飛車に当たり、成りも狙われるからです。鈴木の見つけた答えが、自分も角を打つ▲5六角でした。
後手が飛車を取れば先手は角を取り返し、後手が△6二金で6三の成りを防げば、もう一枚の角を▲5五角と打って8二の飛車と1一の香の両取りをかけます。ja.wikipedia の手順は、飛車と角の交換になったうえで先手が一歩得し、先手十分とされるところで終わります。鈴木はこの手で2005年に升田幸三賞を受けました。
この名前を使っている将棋ウォーズは、最近の石田流ブームのきっかけになった新手としています。十八手目から二十一手目は資料が一つだけです。
組み方
双方の指し手を並べてあります。この戦法は片方だけで組める形ではなく、相手がそう応じて初めて成立する戦型なので、先手の手だけを並べても手順としては嘘になります。
一手ずつ進めるか、再生を押してください。
指し手をタップするとその局面に飛びます。盤を選ぶと矢印キーも使えます。
全手順と、その理由
| # | 先手 | 後手 | 狙い |
|---|---|---|---|
| 1 | ▲7六歩 7g7f | △3四歩 3c3d | 角道を開けます。 後手も角道を開けます。早石田にはこれが必要です。 |
| 3 | ▲7五歩 7f7e | △8四歩 8c8d | 歩をさらに7五へ。 後手は飛車先の歩を突きます。 |
| 5 | ▲7八飛 2h7h | △8五歩 8d8e | 飛車を7八へ、歩の後ろに振ります。 後手は8五まで伸ばします。早石田の局面です。 |
| 7 | ▲7四歩 7e7d | △同歩 7c7d | 鈴木の新手です。玉を5九に置いたまま、すぐに▲7四歩。従来は先に▲4八玉と上がっていました。 後手が取ります。 |
| 9 | ▲同飛 7h7d | △8八角成 2b8h+ | 飛車で取り返し、7四に立ちます。 後手が角を交換します。 |
| 11 | ▲同銀 7i8h | △6五角 B*6e | 銀で取り返します。 後手の△6五角。飛車に当たり、成りも狙っています。▲7四歩が長く無理とされた理由です。 |
| 13 | ▲5六角 B*5f | △7四角 6e7d | 鈴木の見つけた答えです。後手の角に向かい合う▲5六角。 後手が飛車を取ります。 |
| 15 | ▲同角 5f7d | △6二金 6a6b | 先手は角を取り返し、▲6三角成を狙います。 後手の△6二金がこれを防ぎます。 |
| 17 | ▲5五角 B*5e | △7三歩 P*7c | もう一枚の角を5五に打ち、8二の飛車と1一の香の両取りです。 後手は7三に歩を打ちます。飛車への利きを止め、7四の角に当てます。 |
| 19 | ▲5六角 7d5f | △1二飛 R*1b | その角を5六に引きます。1一の香はまだ狙われています。 後手は1二に飛車を打って受けるしかありません。 |
| 21 | ▲3四角 5f3d | 角で3四の歩を取ります。先手十分と ja.wikipedia は判断しています。 |
駒組みのあとの指し方
- 後手が角道を開けたあと、▲7六歩、▲7五歩、▲7八飛と早石田の形に。
- 後手が△8五歩と突いたら、玉を5九に置いたまま、すぐに▲7四歩。
- 歩交換と角交換のあとの△6五角には、▲5六角と打ちます。
- 後手が飛車を取れば角を取り返し、△6二金のあとはもう一枚の角を▲5五角と打って飛車と香を狙います。
- △7三歩には▲5六角と引き、3四の歩を取ります。
気をつけること
- 飛車を角と交換することになります。代わりに得るのは二枚の働く角と一歩で、先手はどの変化にも対応できるがどれも難解だ、と三間飛車のひとくちメモは書いています。
- この手順は後手の△8五歩が前提です。後手が先に△6二銀と上がったり、四手目に△8四歩ではなく△4二玉や△1四歩を指したりすれば、すぐの▲7四歩は成立しません。普通の石田流に進めます。
- 七手目の別の工夫もあります。菅井竜也のすぐの▲7六飛、また▲7四歩△同歩のあと▲同飛ではなく▲4八玉(久保新手)や▲5八玉(稲葉新手)です。
どんな相手に指すか
角道を開け、飛車先の歩を二つ伸ばしてくる居飛車です。この手順が成立するとわかってからは後手が避けるようになった、と三間飛車のひとくちメモは書いています。
△8五歩の前に△6二銀と上がる、あるいは四手目に飛車先の歩を突かない、という避け方です。ja.wikipedia は久保利明の著書をもとに、二十一手目までの手順を示しています。
コンピュータ相手に指してみる。
アプリのコンピュータは、レベル9から12が四間飛車と矢倉の二つを定跡どおりに指し、Mino のレベルは人が指す序盤を指します。対局後の検討では、どの手で定跡を外れたかがわかります。まず手順を、次に狙いを試してください。