狙い
後手番の戦法です。▲7六歩に対し、自分の角道は止めたまま、すぐに飛車を3二へ振ります。先手に飛車先の歩をまっすぐ2三へ突かれるので、2007年まではこの手は成立しないと考えられていました。出典の示す答えは、まず玉を右の6二へ上がり、▲2五歩を見てから角道を開けることです。
先手が角を交換して▲6五角と打ち、8三と4三を同時に狙ってきたら、△7四角と打ち返して8三を受け、角筋は4七をにらみます。双方が馬を作り、6二の玉が5三の歩を守ります。先手が角交換をしなければ、玉は7二へ進み、後手の石田流がふつう損をする一手を損せずに組めます。
この玉上がりを考えたのは奨励会三段だった今泉健司で、第35回升田幸三賞を受けました。奨励会員の受賞は初めてでした。先手が初手で飛車を7八へ振る形は初手▲7八飛戦法です。
組み方
双方の指し手を並べてあります。この戦法は片方だけで組める形ではなく、相手がそう応じて初めて成立する戦型なので、先手の手だけを並べても手順としては嘘になります。
初形
一手ずつ進めるか、再生を押してください。
指し手をタップするとその局面に飛びます。盤を選ぶと矢印キーも使えます。
全手順と、その理由
| # | 先手 | 後手 | 狙い |
|---|---|---|---|
| 1 | ▲7六歩 7g7f | △3二飛 8b3b | 先手が角道を開けます。 角道を止めたまま、二手目で飛車を3二へ。 |
| 3 | ▲2六歩 2g2f | △6二玉 5a6b | 先手は飛車先の歩を突きます。 今泉の一手。玉が右の6二へ上がり、あとで5三を守れるようにします。 |
| 5 | ▲2五歩 2f2e | △3四歩 3c3d | 先手は2五へ伸ばします。 ここで初めて角道を開けます。 |
| 7 | ▲2二角成 8h2b+ | △同銀 3a2b | 先手が角を交換します。 銀で取り返します。 |
| 9 | ▲6五角 B*6e | △7四角 B*7d | 先手の▲6五角は8三と4三に同時に当たります。 答えは△7四角。8三を受けます。 |
| 11 | ▲4三角成 6e4c+ | △4七角成 7d4g+ | 先手が4三で取って馬を作ります。 後手も4七で馬を作ります。6二の玉が5三の歩を守っています。 |
| 13 | ▲5八金右 4i5h | △7四馬 4g7d | 先手は右の金を5八へ上げて馬に備えます。 馬を7四へ引きます。 |
駒組みのあとの指し方
- ▲7六歩を見て、すぐ飛車を3二へ振り、角道は止めておきます。
- 角道を開ける前に玉を右の6二へ上げ、5三を守れるようにします。
- 先手が2五まで突いてから△3四歩と開けます。角交換から▲6五角と打たれたら△7四角と打ちます。
- 先手が角交換をしなければ、玉を7二へ進めて石田流に組むか、穴熊に潜ります。
気をつけること
- 今の四手目は△4二銀です(佐藤康光、2011年)。角打ちの問題はすぐ解消しますが、石田流はほぼ組めなくなり、後手は低い構えの後ろで角道を開けたまま、角交換に備えます。
- 2010年ごろの研究で四手目△6二玉は不利とされ、大きなプロの対局では出なくなった、と出典は書いています。それでも、どの出典にも載り、賞を取ったのはこの手順です。
どんな相手に指すか
先手は三手目▲9六歩と応じることもでき、△9四歩のあと後手が少し損だと出典は見ています。▲7七角で相振り飛車に向かう手もあります。藤井猛は、初手を▲7六歩ではなく▲2六歩にすればこの戦法は指せないと指摘しています。
コンピュータ相手に指してみる。
アプリのコンピュータは、レベル9から12が四間飛車と矢倉の二つを定跡どおりに指し、Mino のレベルは人が指す序盤を指します。対局後の検討では、どの手で定跡を外れたかがわかります。まず手順を、次に狙いを試してください。