狙い
カニカニ銀は、児玉孝一が考案した対矢倉の急戦です。6六と4六に出た二枚の銀がカニのはさみのように見えることからこの名がつきました。2003年の第30回将棋大賞で升田幸三賞を受けました。先手は玉を囲いません。玉と二枚の金は初形のままで、飛車を交換しても陣形が崩れにくいのが利点です。
五手目はいつもの▲6六歩ではなく▲7七銀で、飛車先の歩を2五まで伸ばして、後手に△3三銀と角道を止めさせます。右の銀は4八、5七、4六と進みます。後手が5筋の歩を突いていれば、飛車を中央に回し、角を9七に出し、桂を7七に跳ねて、▲5五歩と仕掛けます。最初の二十七手は二つの資料が示し、仕掛けから先の手順は一つの資料によるものです。
その資料は二十七手目で先手はすでに作戦勝ちだとし、最後の局面を先手勝勢としています。ja.wikipedia はこの戦法を矢倉に分類し、奇襲戦法に数えられることもあるとしています。
組み方
双方の指し手を並べてあります。この戦法は片方だけで組める形ではなく、相手がそう応じて初めて成立する戦型なので、先手の手だけを並べても手順としては嘘になります。
一手ずつ進めるか、再生を押してください。
指し手をタップするとその局面に飛びます。盤を選ぶと矢印キーも使えます。
全手順と、その理由
| # | 先手 | 後手 | 狙い |
|---|---|---|---|
| 1 | ▲7六歩 7g7f | △8四歩 8c8d | 角道を開けます。 後手は飛車先の歩を突きます。 |
| 3 | ▲6八銀 7i6h | △3四歩 3c3d | 左の銀を6八へ。 後手も角道を開けます。 |
| 5 | ▲7七銀 6h7g | △6二銀 7a6b | そのまま▲7七銀。五手目に、矢倉の▲6六歩ではなく銀を上がります。 後手の銀は6二へ。 |
| 7 | ▲5六歩 5g5f | △5四歩 5c5d | 5筋の歩を突きます。 後手も5筋の歩を突きます。この先の攻めはこの手への対策です。 |
| 9 | ▲4八銀 3i4h | △4二銀 3a4b | 右の銀を4八へ。 後手の銀は4二へ。 |
| 11 | ▲2六歩 2g2f | △3二金 4a3b | 飛車先の歩を突き、 後手は自然な△3二金。 |
| 13 | ▲2五歩 2f2e | △3三銀 4b3c | さらに2五まで伸ばし、後手に銀で角道を止めさせます。 後手は△3三銀と止めます。 |
| 15 | ▲5七銀 4h5g | △5二金 6a5b | 右の銀を5七へ。 後手は金を5二へ。 |
| 17 | ▲4六銀 5g4f | △4四歩 4c4d | さらに4六へ。右のはさみです。 後手は△4四歩。 |
| 19 | ▲9六歩 9g9f | △4三金右 5b4c | 角のために端歩を9六へ。 後手は金を4三へ。 |
| 21 | ▲9七角 8h9g | △5三銀 6b5c | 角を9七へ。 後手の銀は5三へ。 |
| 23 | ▲6六銀 7g6f | △4一玉 5a4a | 左の銀を6六へ。左のはさみです。 後手の玉は4一へ。 |
| 25 | ▲5八飛 2h5h | △3一角 2b3a | 飛車を中央の5八へ。 後手の角は3一に引きます。 |
| 27 | ▲7七桂 8i7g | △9四歩 9c9d | ▲7七桂で陣形が完成します。玉と二枚の金は一度も動いていません。資料はここで先手が作戦勝ちだとしています。 後手は△9四歩。 |
| 29 | ▲5五歩 5f5e | △同歩 5d5e | ▲5五歩と中央で仕掛けます。 後手が取ります。 |
| 31 | ▲同銀右 4f5e | △5四歩 P*5d | 右の銀で取り返します。 後手は5四に歩を打ち、銀に当てます。 |
| 33 | ▲6五桂 7g6e | △5五歩 5d5e | 桂を6五に跳ねます。 後手の歩が5五の銀を取ります。 |
| 35 | ▲5三桂成 6e5c+ | △同金 4c5c | 桂が5三に成り込みます。 後手の金が取ります。 |
| 37 | ▲5五銀 6f5e | もう一枚の銀が5五で取ります。資料は先手勝勢としています。 |
駒組みのあとの指し方
- 角道を開け、左の銀を6八、7七へ。5筋の歩を突き、右の銀を4八に上げてから、飛車先の歩を2五まで伸ばします。
- 後手の銀が3三で角道を止めたら、右の銀を5七から4六へ。
- 端歩を9六に突き、角を9七、左の銀を6六へ。
- 飛車を5八に回し、桂を7七に跳ねます。
- ▲5五歩と仕掛け、桂を6五に跳ねて加えます。
気をつけること
- ▲3六歩。中央から攻めるとき、3筋の歩を突くと自玉が薄くなり、攻めも遅れる、と ja.wikipedia は書いています。
- 後手が中央に備える形。△5二金右から飛車を6二に回す受けです。下の項では、銀で取る前に桂を跳ねておけば、それでも突破できることを示します。
- 後手が5筋の歩を突かない形。中央に争点がなくなります。ja.wikipedia の対策は、角を7九に引き、右の銀を3筋で早繰り銀のように使う形です。
- 自玉。最下段の金のほかに守り駒はありません。攻めを続けなければなりません。
どんな相手に指すか
後手は△3三銀、金を3二と4三に置いて矢倉をめざします。初めのころ後手は素直な△3二金で先手に陣形を組ませていましたが、のちに△5二金右で中央に備え、飛車でも6筋を守れるようにしました。
後手が中央に備えたとき
△5二金右型に対して(金右型)
ja.wikipedia によると、後手は初め3二の金のまま先手に陣形を組ませていましたが、中央の突破を止めにくいことから、△5二金右で中央に備えるようになりました。上の手順の資料はこの受けも、行けるところまで進めた形で示しています。金を5二から4三へ、銀を5三へ、歩を6四へ(一枚目の図)、そのうえ飛車も6二に回します。
それでも先手は突破します。銀は前と同じく4六と6六ですが、今度は先に▲5五歩と突き、△同歩を見てから▲7七桂と跳ね、5五は左の銀で取ります。後手が5四に歩を打つと、桂を6五に捨て、銀で5四の歩を取り、△同金を飛車で取ります(二枚目の図)。資料は後手陣が崩壊したとしています。
コンピュータ相手に指してみる。
アプリのコンピュータは、レベル9から12が四間飛車と矢倉の二つを定跡どおりに指し、Mino のレベルは人が指す序盤を指します。対局後の検討では、どの手で定跡を外れたかがわかります。まず手順を、次に狙いを試してください。