狙い
初代実力制名人の木村義雄が発表した腰掛け銀の定跡です。ja.wikipedia によると、名人位を塚田正夫に奪われたあと、若手の腰掛け銀に対抗するために研究したものです。双方が同じ形、右の金を5八(後手は5二)に置く▲5八金型に組みます。銀は5六と5四、桂は跳ね、端歩も突き合います。
双方の玉が隅に入り、先手が8八、後手が2二に玉を寄せたところで、先手は▲4五歩から仕掛け、そこからの歩の突き捨てにはそれぞれ役割があります。▲3五歩は桂跳ねの準備、▲7五歩は7三の桂の頭をねらう手で、後手は△6三角と打って受けることになります。▲1五歩と▲1三歩で端を開けて桂を2五に跳ね、最後は飛車を切ります。
資料は初手から七十三手の投了図までを示しています。ja.wikipedia を含む二つの資料は同じ手順で、もう一つの資料は歩の突き捨ての順序を入れ替えて同じ局面に至っています。その資料は先手が勝つ理由を二つ挙げています。後手玉が囲いに入っているので端攻めが厳しいこと、そして先手は自玉の心配をせずに飛車を切れることです。
この定跡は後手の△2二玉があって初めて成立し、ja.wikipedia はこの手を敗着としています。
組み方
双方の指し手を並べてあります。この戦法は片方だけで組める形ではなく、相手がそう応じて初めて成立する戦型なので、先手の手だけを並べても手順としては嘘になります。
一手ずつ進めるか、再生を押してください。
指し手をタップするとその局面に飛びます。盤を選ぶと矢印キーも使えます。
全手順と、その理由
| # | 先手 | 後手 | 狙い |
|---|---|---|---|
| 1 | ▲7六歩 7g7f | △8四歩 8c8d | 角道を開けます。 後手は飛車先の歩を突きます。 |
| 3 | ▲2六歩 2g2f | △3二金 4a3b | 飛車先の歩を突きます。 後手は左の金を3二へ。 |
| 5 | ▲7八金 6i7h | △8五歩 8d8e | 左の金を7八へ。 後手の飛車先の歩が8五まで伸びます。 |
| 7 | ▲7七角 8h7g | △3四歩 3c3d | ▲7七角と上がります。 後手が角道を開け、角が向かい合います。 |
| 9 | ▲8八銀 7i8h | △7七角成 2b7g+ | 左の銀を8八へ。取り返す準備です。 後手が角を交換して角換わりになります。 |
| 11 | ▲同銀 8h7g | △4二銀 3a4b | 銀で取り返します。双方が角を持ち駒にしています。 後手は左の銀を4二へ。 |
| 13 | ▲3八銀 3i3h | △7二銀 7a7b | 右の銀を3八へ。 後手は右の銀を7二へ。 |
| 15 | ▲4六歩 4g4f | △6四歩 6c6d | ▲4六歩で銀の通り道を作ります。 後手も同じように△6四歩。 |
| 17 | ▲4七銀 3h4g | △6三銀 7b6c | 銀を4七へ。 後手の銀は6三へ。 |
| 19 | ▲6六歩 6g6f | △5二金 6a5b | ▲6六歩。 後手は右の金を5二へ。 |
| 21 | ▲5八金 4i5h | △4一玉 5a4a | 右の金を5八へ。この定跡が属する▲5八金型です。 後手の玉は4一へ。 |
| 23 | ▲6八玉 5i6h | △5四銀 6c5d | 玉を6八へ。 後手の銀が5四に腰掛けます。 |
| 25 | ▲5六銀 4g5f | △3一玉 4a3a | 先手も▲5六銀と腰掛け、腰掛け銀の形になります。 後手の玉は3一へ。 |
| 27 | ▲7九玉 6h7i | △1四歩 1c1d | 玉を7九へ。 後手が端歩を突きます。 |
| 29 | ▲1六歩 1g1f | △9四歩 9c9d | 先手も端歩を突き返します。 後手がもう一方の端歩を突きます。 |
| 31 | ▲9六歩 9g9f | △7四歩 7c7d | 先手も突き返します。 後手は△7四歩。 |
| 33 | ▲3六歩 3g3f | △4四歩 4c4d | ▲3六歩。 後手は△4四歩。 |
| 35 | ▲3七桂 2i3g | △7三桂 8a7c | 桂を3七に跳ねます。 後手も桂を7三に跳ねます。 |
| 37 | ▲2五歩 2f2e | △3三銀 4b3c | ▲2五歩。 後手は△3三銀。双方の陣形が一マス残らず同じになります。のちの升田幸三の攻めは、ここからすぐに▲4五歩と仕掛けます。 |
| 39 | ▲8八玉 7i8h | △2二玉 3a2b | ▲8八玉。資料はこれを疑問手としています。後手に△6五歩と先攻されるからです。 後手は△2二玉。ja.wikipedia はこれを敗着としています。 |
| 41 | ▲4五歩 4f4e | △同歩 4d4e | すべての始まりとなる歩の突き捨て、▲4五歩。 後手が取ります。 |
| 43 | ▲3五歩 3f3e | △4四銀 3c4d | ▲3五歩は桂跳ねの準備です。△同歩なら▲4五桂と跳ねます。 後手の銀が4四へ。 |
| 45 | ▲7五歩 7f7e | △同歩 7d7e | ▲7五歩で後手の桂の頭をねらいます。 後手が取ります。 |
| 47 | ▲1五歩 1f1e | △同歩 1d1e | 端歩を▲1五歩と突きます。 後手が取ります。 |
| 49 | ▲2四歩 2e2d | △同歩 2c2d | ▲2四歩。 後手が取ります。 |
| 51 | ▲同飛 2h2d | △2三歩 P*2c | 飛車で取り返します。 後手は△2三歩と打ちます。 |
| 53 | ▲2八飛 2d2h | △6三角 B*6c | 飛車を2八に引きます。 後手は△6三角と打ち、桂の頭の7四を守ります。資料はこれを最善の受けとしています。 |
| 55 | ▲1三歩 P*1c | △同香 1a1c | ▲1三歩と打ちます。 香で取ります。△同玉なら▲1五香で負けます。 |
| 57 | ▲2五桂 3g2e | △1四香 1c1d | 桂を2五に跳ね、1三の香に当てます。 香が1四へ上がります。△2四歩なら▲1三桂成です。 |
| 59 | ▲3四歩 3e3d | △2四歩 2c2d | ▲3四歩と取り込み、▲3三歩成をねらいます。 後手は△2四歩と桂に当てます。 |
| 61 | ▲3三桂成 2e3c+ | △同桂 2a3c | 歩より先に桂が▲3三桂成と王手で成り込みます。これで2筋が開き、飛車が使えます。 後手が桂で取ります。 |
| 63 | ▲2四飛 2h2d | △2三金 3b2c | ▲2四飛と取って王手。1四の香にも当たっています。 後手は△2三金と合駒します。 |
| 65 | ▲1一角 B*1a | △3二玉 2b3b | ▲1一角と打って王手。 後手玉は3二へ。△同玉や△1三玉はもっと早く負けます。 |
| 67 | ▲3三歩成 3d3c+ | △同銀 4d3c | ▲3三歩成と桂を取って王手。 後手が銀で取ります。 |
| 69 | ▲4四桂 N*4d | △同銀 3c4d | ▲4四桂と打って王手。玉と5二の金の両取りです。 後手が銀で取ります。 |
| 71 | ▲2三飛成 2d2c+ | △同玉 3b2c | ▲2三飛成と金を取って王手。 後手が玉で竜を取ります。 |
| 73 | ▲4四角成 1a4d+ | 1一の角が▲4四角成と銀を取ります。ここで後手が投了します。 |
駒組みのあとの指し方
- ▲5八金型の先後同型の腰掛け銀に組み、玉を8八に入れます。
- ▲4五歩、△同歩に▲3五歩。4筋と3筋を開け、桂が跳べるようにします。
- ▲7五歩と▲1五歩、それから2筋で歩を交換します。
- ▲1三歩、▲2五桂、▲3四歩。端と3筋をねらいます。
- ▲3三桂成、▲2四飛の王手、▲1一角と迫り、最後は飛車を切って寄せます。
気をつけること
- ▲3三歩成より先に▲3三桂成。桂が2五からいなくなることで2筋が開き、▲2四飛が王手になります。
- ▲3五歩に後手が△4四銀ではなく△同歩と取れば、▲4五桂と跳ねます。
- ▲4五歩に後手が取らずに△6五歩と突けば、▲4六角と打ちます。ja.wikipedia ももう一つの資料も、先手が指せる局面としています。
- 後手玉が2二にいることが条件です。玉が隅に入っているからこそ、この攻めが決まります。
どんな相手に指すか
△2二玉と寄らないことです。ja.wikipedia はこれを敗着とし、代わりに△6五歩と先攻する手順を示しています。引用されたブログによれば、その手順は後手優勢になります。
同じ理由で先手の▲8八玉も疑問手とされ、この定跡はいまでは現れません。その後は、先後同型の局面で一手早く▲4五歩と仕掛ける升田幸三の指し方、さらに富岡流が取って代わりました。
コンピュータ相手に指してみる。
アプリのコンピュータは、レベル9から12が四間飛車と矢倉の二つを定跡どおりに指し、Mino のレベルは人が指す序盤を指します。対局後の検討では、どの手で定跡を外れたかがわかります。まず手順を、次に狙いを試してください。