狙い
後手の戦法です。普通の角換わりでは先手が▲7七角と上がり、後手が7七で取るので、交換でどちらも手損はしません。ここでは後手が、先手の角がまだ8八にいるうちに△8八角成と取ります。先手は7九の銀で取り返し、同時にその銀が前に出ます。後手は後手番であるうえに、さらに一手遅れることになります。それでも成り立つ理由は二つあります。
角換わりはどちらも簡単には攻められない戦型なので、待つ手に価値があり、一手の損がほかの戦法ほど響きません。後手は先手の手をもう一手見てから形を選べます。そして後手は、飛車先の歩を8五まで突かずに済みます。歩が8四にいれば8五のマスは空いたままで、7三の桂がそこへ跳ねて、攻めにも、頭を攻められたときの逃げ道にも使えます。
玉はどちらも角換わりの囲いで、先手は兜矢倉(玉7九、金7八・5八、銀7七)、後手はそれをひっくり返した形(玉3一、金3二・5二、銀3三)です。淡路仁茂が創案し、2006年に升田幸三賞を受けました。
組み方
双方の指し手を並べてあります。この戦法は片方だけで組める形ではなく、相手がそう応じて初めて成立する戦型なので、先手の手だけを並べても手順としては嘘になります。
一手ずつ進めるか、再生を押してください。
指し手をタップするとその局面に飛びます。盤を選ぶと矢印キーも使えます。
全手順と、その理由
| # | 先手 | 後手 | 狙い |
|---|---|---|---|
| 1 | ▲7六歩 7g7f | △3四歩 3c3d | 角道を開けます。 後手も角道を開けます。 |
| 3 | ▲2六歩 2g2f | △8四歩 8c8d | 先手は飛車先の歩を突きます。 後手の飛車先の歩。普通の角換わりなら8五まで伸ばしますが、ここでは8四で止めたままにします。 |
| 5 | ▲2五歩 2f2e | △8八角成 2b8h+ | 先手は2五へ伸ばします。 先手の角がまだ8八にいるうちの角交換。これが一手損です。 |
| 7 | ▲同銀 7i8h | △2二銀 3a2b | 銀が7九から取り返し、同じ一手で前に出ます。 後手の左銀が2二へ。3三へ向かう途中です。 |
| 9 | ▲7七銀 8h7g | △3二金 4a3b | 先手の銀が7七へ。兜矢倉の銀です。 後手の左金が3二へ。 |
| 11 | ▲7八金 6i7h | △3三銀 2b3c | 先手の左金が7八へ。 銀が3三に着き、先手の飛車先の歩に対して2四を守ります。 |
| 13 | ▲3八銀 3i3h | △7二銀 7a7b | 先手の右銀が3八へ。 後手の右銀が7二へ。 |
| 15 | ▲9六歩 9g9f | △9四歩 9c9d | 双方が端歩を突きます。 |
| 17 | ▲1六歩 1g1f | △1四歩 1c1d | |
| 19 | ▲4六歩 4g4f | △6四歩 6c6d | 先手は右銀の通り道を作ります。 |
| 21 | ▲4七銀 3h4g | △6三銀 7b6c | 先手の銀が4七へ。 後手の銀が6三へ。 |
| 23 | ▲5八金 4i5h | △5二金 6a5b | 先手の右金が5八へ。 後手の右金が5二へ。 |
| 25 | ▲6八玉 5i6h | △4二玉 5a4b | 先手玉が6八へ。 後手玉が4二へ。 |
| 27 | ▲7九玉 6h7i | △5四銀 6c5d | 先手玉はさらに7九へ。先手の兜矢倉、玉7九、金7八・5八、銀7七です。 後手の銀が5四へ。腰掛け銀です。 |
| 29 | ▲5六銀 4g5f | △3一玉 4b3a | 先手も5六へ。これで双方が腰掛け銀になりました。 後手玉が3一へ。同じ囲いをひっくり返した形で、玉3一、金3二・5二、銀3三です。 |
| 31 | ▲3六歩 3g3f | △4四歩 4c4d | 後手は△4四歩。 |
| 33 | ▲6六歩 6g6f | △7四歩 7c7d | 後手は△7四歩と突き、桂が7三へ跳ねられるようにします。 |
| 35 | ▲3七桂 2i3g | △7三桂 8a7c | 先手の桂が3七へ。 後手の桂が7三へ。その前の8五はまだ空いています。双方の囲いが完成し、三つの出典がそろって図に描く局面です。 |
駒組みのあとの指し方
- △3四歩で角道を開け、先手が▲7七角と上がる前に8八で角を交換します。この手順では六手目ですが、▲2六歩の直後に一手早く取る指し方もあります。
- 銀を2二、さらに3三へ上がります。そこで先手の飛車先に対して2四を守ります。
- 飛車先の歩は8四に置いたまま。玉を3一に囲い、右の銀を5四へ、桂を7三へ。
- 先手が▲7四歩で桂を攻めてきたら、8五へ跳ねます。歩がすでに8五にいる普通の角換わりなら、7四への歩打ちは後手にとって厳しい手です。この手順の出典である shogi-rule.com は、ここで止めた局面のさらに先も並べています。先手が▲4五歩から仕掛け、端、7筋、2筋と歩を突いて、最後に▲7四歩と打ち、桂が8五へ跳ねます。
- 早繰り銀に対しては、結局△8五歩と突き、自分も腰掛け銀で応じます。その組み合わせに向いた形です。
気をつけること
- 早繰り銀。先手は一手の得を▲4六銀から▲3五歩の速い攻めに使い、出典はこれを最大の試金石としています。青野照市のこの戦法の本も、まるごと一章を割いています。
- 棒銀。先手はまっすぐ端を攻めてこられます。8四の歩のおかげで、端で銀と香を交換したあとの▲6六角から▲8四香という先手の続きの一つが消えています。
- 右玉。一手の得を使って、先手は端歩を1五まで伸ばし、右に玉を囲えます。出典によれば、この作戦は普通の角換わりよりもここでのほうが先手に合っています。
どんな相手に指すか
一手の得をどう使うかは先手が選びます。標準的な対策は三つで、上の手順につながる腰掛け銀、一手損をとがめる最も直接的な棒銀、そして相腰掛け銀で先手の利が薄れてから先手が向かった早繰り銀です。
ポンポン桂や右玉も指され、先手のダイレクト向かい飛車にも定跡があります。出典の記述では、どれもこの戦法を否定するものではありません。
コンピュータ相手に指してみる。
アプリのコンピュータは、レベル9から12が四間飛車と矢倉の二つを定跡どおりに指し、Mino のレベルは人が指す序盤を指します。対局後の検討では、どの手で定跡を外れたかがわかります。まず手順を、次に狙いを試してください。