狙い
振り飛車でいちばん分かりやすい形です。飛車が中央の筋に来て、その前の歩が5五まで伸び、双方が無視できない筋にすべてが向きます。隠すところも細かいところもなく、覚えるのがいちばん簡単で、しかも受けにくさでは指折りの振り飛車になっているのはそのためです。囲いは片美濃囲いで、金が一枚は元の位置に残ります。
美濃囲いがその金を置きたい5八に、飛車が座っているからです。組み方の間違いではなく、この戦法の代償で、その代わりに飛車は盤上でいちばん価値のある筋に立ちます。
組み方
先手の指し手だけを並べてあります。対局ではなく組み方の手順なので、後手は動かしていません。一手ごとに後手が応じる形にすると、狙いの形が見えなくなるからです。手順はすべて実際のルールで動かして確かめてあり、盤面はルール上あり得る局面です。
一手ずつ進めるか、再生を押してください。
指し手をタップするとその局面に飛びます。盤を選ぶと矢印キーも使えます。
全手順と、その理由
| # | 先手 | 狙い |
|---|---|---|
| 1 | ▲5六歩 5g5f | まず中央の歩。 |
| 2 | ▲7六歩 7g7f | 次に角道。 |
| 3 | ▲7七角 8h7g | 飛車が動く前に、角が8六を受けておきます。 |
| 4 | ▲5五歩 5f5e | 5五へ。中飛車の看板になる歩です。 |
| 5 | ▲5八飛 2h5h | 飛車が中央、自分の歩の後ろに来ます。 |
| 6 | ▲4八玉 5i4h | 玉が歩き始めます。 |
| 7 | ▲3八玉 4h3h | 玉がもう一つ。 |
| 8 | ▲2八玉 3h2h | 三つ目で定位置。 |
| 9 | ▲3八銀 3i3h | 銀もその隣へ。これが片美濃囲いです。5八に金がいないのは、そこに飛車がいるからです。 |
| 10 | ▲1六歩 1g1f | どの美濃囲いも欲しい逃げ道。 |
駒組みのあとの指し方
- 仕掛けは5四です。飛車で取り返せる形になったところで中央の歩を交換すれば、開いた筋にはもう自分の飛車がいます。
- 7七の角と中央の飛車で、盤の大半に利きが通ります。その斜めを開けたままにして、飛車の筋には自分の駒を置かないこと。
- 中央が落ち着いたら、囲いは作り直さずに整える程度にします。飛車がいる限り金は5八へ行けないので、頼れるのは4九の金と1六の逃げ道です。
- 中央が詰まったら、飛車をもう一度振ります。2筋でも、4筋でも。一筋で仕事がなくなった飛車は、動けない駒ではありません。
気をつけること
- 歩の上に出てくる5六の銀。落ち着かれる前に角か6七の歩で応じます。
- 5八のマスです。飛車がそこにいるあいだ囲いは金一枚分薄く、玉の近くへの打ち込みが本美濃より響きます。
- 穴熊。この戦法へのよくある答えの一つで、相手が潜るなら組み合うより早めに中央から動くことです。
どんな相手に指すか
どちらの相手にも。受けとしてではなく、こちらから決める戦法として選ばれることがいちばん多い振り飛車です。居飛車が相手なら戦いは中央の歩、相振り飛車なら中央の二筋をめぐる速さの競争になります。
ほかの中飛車
ja.wikipedia はどちらもツノ銀中飛車の項目で扱っています。完成形までの手順を示した資料はどちらにもないので、局面で示します。
英ちゃん流中飛車
愛称を英ちゃんといった山口英夫は、5筋の歩を突かない中飛車を指しました。当時居飛車側が用いていた玉頭位取りへの対策として考えた、と本人が語っています。上の手順と比べると、6六の歩で角道を止め、左の銀は6七に置き、5筋の歩は一度も動かしません。囲いは同じ片美濃囲いです。急戦にすばやく対応できる形だと将棋ウォーズは説明しています。
ja.wikipedia が一つ目の図から示す続きでは、後手がゆっくり駒組みをし、先手は囲いの銀を4七へ上げ、飛車を3八へ回し、▲3五歩で3筋を開けます。5筋の歩を突かなかった分の手を反撃に回すわけです(二つ目の図)。後手が6筋から急戦で来た場合は、6七の銀が、5筋の歩が使うはずだった5六へ出られます。
風車
伊藤果は居飛車穴熊への対策として、ツノ銀中飛車から風車を作りました。伊藤自身が先手だけの組み方を示しています。▲7六歩、▲6六歩、▲6八銀、▲6七銀、▲5八飛、▲4八玉、▲3八玉、▲4八銀、▲5六歩、▲4六歩、▲3六歩、▲4七銀、▲7七角、▲7八金、▲4八金、▲5九飛、▲3七桂、▲2六歩、▲1六歩。
突ける歩はすべて突き、先に▲4八金と上がっているので飛車を5九に引けます(一つ目の図)。そこからは順番ではなく駒の行き先が示されています。角は6八に引いて5七へ、左の桂は7七へ跳ね、玉がいなくなったら金を3八へ寄せ、香はそれぞれ一つ上がり、玉は中央へ歩き、飛車は最下段を端から端まで動きます。
それが名前の由来です(二つ目の図、伊藤自身の図)。風車には囲いがなく、全体が囲いであり全駒が活動駒だ、と伊藤は書いています。「戦わない!! 攻めない!!」が信条で、千日手も歓迎でした。伊藤以外が指すのは難しい、という森内俊之の言葉を ja.wikipedia が紹介しています。
AIが高く評価するまで指す人はほとんどいませんでしたが、伊藤は2026年の将棋大賞でこの戦法により升田幸三賞を受けました。
コンピュータ相手に指してみる。
アプリのコンピュータは、レベル9から12が四間飛車と矢倉の二つを定跡どおりに指し、Mino のレベルは人が指す序盤を指します。対局後の検討では、どの手で定跡を外れたかがわかります。まず手順を、次に狙いを試してください。